私の、ウィスキーへの評価をガラリと変えた一品があります。


 それまでのウィスキーの印象といえば、

 とにかく高い。年配の方、オヤジが飲むもの。強すぎて飲みづらい。
 「ロックは格好を付けてるだけだ」とか、「水割りで飲むのは邪道だ」とか、「ストレートで飲む奴はただの気取り屋だ」とか、こだわりが強い上にん、なにやら悪口も多いようだ。

 そんな印象。


 私の場合、意識的に飲んできたのは、
 Wild - Turkey 【ワイルド・ターキー】 JOHNNY - WALKER 【ジョニー・ウォーカー】 の赤と黒→ Ballantine 【バランタイン】 のFinest 【ファイネスト】→ MACALLAN 【マッカラン】 の10年、12年、といった流れで来ているので、最初のものを除けば、比較的飲みやすいウィスキーばかりなのです。

 マッカランを飲んだ後はしばらくバーボンを探索していました。それからスコッチのブレンデッドへ移行。考えてみれば「優しい」ウィスキーばかり飲んでいたわけです。
「マッカランの味が分かるなら・・・お酒も強いみたいだし、これなんてどう?」
 行きつけの飲み屋で、とある大学の先生から勧められたウィスキー。飲んだ瞬間、
「草の香り?・・・海・・・というか、海の近くの草原を、馬の群れが駆けて行ってるみたい・・・」
「ああ、いい表現だ。分かるんだね」
 今だから言える、強烈なスモーキー・フレーヴァー。激しいまでのピート香。海を感じさせるヨード香。それらが余韻となっていつまでも残っている。アイラの特徴を前面に打ち出してくるこの印象の深さ。

 そのウィスキーとは・・・。
Out of sight , in a remote cove near Port Askaig lies Caol Ila , hidden gem among Islay's distilleries since 1846. Not easy to find , Caol Ila's secret malt is nonetheless highly prized among devotees of the Islay style.
 スコットランド北西部にあるヘブリディーズ諸島。その中で最大の島にマカスキル兄弟が降り立ったのは1927年のこと。
 大きなごつごつとした岩が並んでいる島の西岸に土地を借り、そこで彼らは羊の飼育に励みながら、ある野望を心に秘めていました。

 3年後の1830年。ハーポート湖畔の農場に、彼らはウィスキーの蒸留所を設立しました。これを知った聖職者ロデリック=マクラウドが猛反対したものの、それだけで蒸留所が閉鎖されるはずもなく、「この島で今までに起こった最も忌まわしい出来事だ」と嘆いたそうです。

 この島の名前は SKYE[スカィ]島。

 そしてこの島で唯一の、この蒸留所の名前を冠したウィスキーが・・・。

 ポールは舞踏会で、とある女性と出会い、一目で恋に落ちました。そして彼女にプロポーズをしたところ、女性はこう答えました。
「次の舞踏会までお待ちください。そして、プロポーズを受けるなら、バラのコサージュを付けてまいります」
 果たして次の舞踏会が開かれたその日、彼女は胸に4本のバラのコサージュを付けて現れたのです。

 ポール、名字はジョーンズ。「FOUR ROSES」社の創業者である。

 予定は未定であって決定ではない、ということを思い知らされた今日。
 ”狙っている”ラムを買いに、件の酒屋さんに赴いたところ、何と休日。車で30分がまったくのムダになってしまいました(←あらかじめ調べておけ、という説が有力)。
 で、久々の酒屋巡り。

 酒屋さんを探訪するとすぐに気付くのが、その値段の差。同じお酒なのに、なんでこんなに違うのだろうという代物が多い。といっても、標準で1500円ぐらいのリキュールなら、上はだいたい1900円ぐらいで、下は1200円ぐらいでしょうか。それでも一番上と一番下を比べると、これは格段の差なわけですよ。そこまで差がなくても、100円から200円ぐらい違うのはザラ(←ここで「アスラン」という突っ込みを入れた人はいないでしょうね?)。
 特に洋酒の類は、オープン価格になっているので、日本酒や焼酎、ジャパニーズ・ウィスキーに比べると、上記ぐらいの差が出てしまうわけで。
 量販店だから安いとは限らない。逆にスーパーだから高いとも限らない。底値で買うのは本当に難しい。

 で、本日。3件ほど巡ったわけですが、見事に期待外れ。一番ヒドかったのは、全部で50器ぐらいの棚があるお店で、いわゆる洋酒が1棚、リキュール・カクテル材料で1棚。残りはワインが1/5ぐらいと、日本のお酒が4/5ぐらい。・・・ええ、確かにここは日本ですけれど、この差はいくらなんでも酷じゃありませんか? と店員さんに言いたかったですけど、言っても仕方ないのでそのままさようなら。

 帰り際、家に着くまでもう少しという所に、ものすごく小さな酒屋さんを見つけて、外にバーボンのケースが置いてあったので入ってみました。中は、予想通り、日本のお酒が3/4ぐらいで、残り1/4のうちの半分がワイン、さらに残り半分をウィスキー。ウィスキーは海外とジャパニーズが半々。バーボンもスコッチも、普通の値段だなぁ・・・というか、いまどきCHIVAS RIGAL 【シーバス・リーガル】にこんな高値付けてる店、ないですぜ・・・と思いつつ、隣の棚に妙な「値段」が。ブレンデッド・スコッチの、Ballantine FINEST 【バランタイン・ファイネスト】とそしてもう1本が、特売でも付かないような安値に!? うわぁ、ここの店長、絶対にブレンデッドの評価低く見てる。
 ここは店長さんに直談判して、ブレンデッドの魅力を説いてやろうではありませんか・・・なんてことをするはずもなく、黙って購入。店員さんは明らかに「こんな安いの買ってくなんてケチな客だねぇ、フン」という感じの、憮然とした面持ち。こちらは「いやいや、安物買いですみませんね」なんて申し訳なさそうな顔をしながら店を出て、車に乗り込んで、スッと大通りに出た瞬間、車内で思わず
 ○○○○、ゲットだぜ!
 と叫んじゃいました。




 ようやく本題。

ザ・フェイマス・グラウス

THE FAMOUS GROUSE
 【ザ・フェイマス・グラウス】


 ブレンデッド・ウィスキーです。
 製造元はMatthew Gloag & son ltd., 【マシュー・グローグ&サン社】。創業は1800年。創業者マシュー=グローグは元々、サマセット州パースで貴族の執事をしていたが、1779年に食料雑貨店の娘と結婚。義父の店を継いだ。取り扱っていた商品は雑貨、ワイン、やがては自らブレンドしたウィスキーである(このあたり、ウォーカーやバランタインに共通するものを感じますね)。そして孫である3代目のマシューが1897年に作り上げたブレンデッド・ウィスキーに、”雷鳥”を意味する「ザ・グラウス・ブランド」と名前を付けたのである。
 雷鳥はスコットランドの国鳥なのだが、これを付けた理由は当時、上流階級で流行っていた雷鳥狩りにちなみ、彼ら上流階級にアピールするためだったという(アメリカでは七面鳥狩りに持ち込まれたバーボンに「ワイルド・ターキー」と名が付いたエピソードがあるが、あちらは七面鳥狩りが先で、名前が後である)。
 やがて、「ザ・グラウス・ブランド」が人気を博すと、不思議な現象が起きた。このお酒を頼む人たちが「『The Famous 【あの有名な】』雷鳥のウィスキー」と言っている。これに気付いたマシューは、「ザ・フェイマス・グラウス」と改名したのである。
 有名なモルトは、HIGHLAND PARK 【ハイランド・パーク】、TAMDHU 【タムデュー】など。
 1970年、ロバートソン&バクスター社に経営権を売却。しかしこれは、バランタインが経営権を売却したのと全く同じ理由。つまり、国際競争力を付けるためである。


 ちなみに私が叫んだ言葉は「グラウス、ゲットだぜ!」
 香りは優しい。キレがある。ピート香はかすかなので、あの独特の香りが苦手な人でも大丈夫だと思うし、逆にアイラ党(ピート香濃厚派)にも不満を感じないと思う(自分がアイラ党なので)。一瞬、舌に絡み付いてくるような刺激があるのだけれど、まろやかな感じで包まれているので悪い気はしない(ここにタムデューの潜みを感じた)。フィニッシュは、たとえようのないくらい華麗。言われ見れば確かにハイランド・パークの長所が随所にはっきりと現れているのに、少し違う。複雑なのに雑でなく、すっきりとしていて鬱陶しくないというのが面白い。
 もの凄く得した気分。
 あの店の店長さんが、これを読んでないことを祈る(苦笑)。



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