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Cocktail - 第10回 いわゆる本格

Posted by 倖成卓志 on 29.2006 悠久のカクテル 0 comments 0 trackback
 格の違い、というものは厳然として存在している。

 これはどの世界の、どの分野においても、である。

 例えば野球。
 日本の高校野球システムがアメリカで注目されている。まず、各県において「トーナメント方式」の試合を行い、そこで勝ち上がった代表校が、再び「トーナメント方式で」勝敗を決する。日本ではすっかりお馴染みなのだが、アメリカのベース・ボール関係者はこれを聞いて大いに驚くという。何故なら、今年の優勝校である早稲田実業高校は、最初から最後の試合まで「一度も負けていない」のである。尋常なスポーツではあり得ない現象である。
 どこがあり得ないのかというと、
 今度はサッカーに移りますが、サッカーのW杯(ワールド・カップ)において、一度も負けずに予選を勝ち上がる国は、ほとんどありません。各地域ごとで「総当たり戦」を行い、上位のチームが開催国に集まり、そこで4か国ずつのチーム分けがされて第二次予選を「総当たり戦」で行う。その上位チームが本選に入ってようやく、「トーナメント方式」で最後まで戦う。極端に言えば、二次予選A組で無敗の国と、B組で勝ち負けを繰り返してようやく上がってきた国とが、対等の位置で戦うわけです。
 こうして並べてみると、不思議に感じませんか?
 高校野球とサッカーの、どちらのやり方がいいか、という意味ではありませんよ。
 高校野球の方式は、あまりにもシビアであり過ぎるのです。「一度でも負けたら終わり」。参加校が多すぎる、日程が短すぎるという実情があるにせよ、緊張感を解く猶予もなく、一度の失敗がすべてを台無しにしかねない状況で戦い続けている。
 しかも、である。その中からプロの選手になれるのはごく一握りである。その一握りの中で、さらに一軍に登録されるのはさらに一握りである。その中でさらに、スターティング・メンバーとして登録されるのは1日のうちでたったの9人。しかも守備位置1か所につき、1人である。さらに「一流」と呼ばれる選手になるのは、ますますもって、一握りでしかない。
 「イチローやマツイが凄い理由が分かった」と、アメリカのとあるベース・ボール関係者が漏らしたそうだが、かくありなん。
 一応弁護すれば、アメリカにもハイ・スクール同士が各地域でベース・ボールの優勝を競う大会はあるにはある。ただし、日本の甲子園のように全国から集って短期間に「無敗の王者」を決めるような制度はないようだ。
「いつまでも『メジャー・リーグに挑戦』なんて言葉を使うな。日本からメジャー・リーグへ助っ人に行っている、と言え」
 とある日本の野球関係者のコメントである。

 -  ☆  -  ★  -  ☆  -  ★  -

 マンハッタン。
 ニューヨークの中心地にある、島の名前である。ここにホテル・マンハッタンがあり、地下にはバーがある。
 何年も前に見たTVで出てきた内容なので記憶は確かではない。バーの名前も、バーテンダーの名前もとんと思い出せない。多分、現在でも存在していると思う。しかし、強烈な印象が今でも残っている。
 このバーの名物カクテルは、もちろん「Manhattan 【マンハッタン】」である。

カクテル・赤色

Manhattan 【マンハッタン】
基酒:Rye - Whisky 【ライ・ウィスキー】
技法:ステア
度数:32度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
Rye - Whiskey 【ライ・ウィスキー】 3/4
Sweet - Vermoute 【スウィート・ヴェルモット】 1/4
Angostura - Bitters 【アンゴスチュラ・ビターズ】 1dash.

 「マンハッタン島にある、ホテル・マンハッタンで飲む、これこそが本物のマンハッタン・カクテルです」。そういった紹介だったので、このホテルはホテル・マンハッタンのはずである(記憶違いであれば訂正のコメントをいただきたいが)。
 しかし私が主張したいのは、この言葉ではない。こういったフレーズは、実はあまり珍しくない。強烈だったのは、次の仕草である。
 カウンターに一人の青年男性が座っている。彼はバーテンダーの左手側に位置している。そして青年男性客の左側は2つほど席が空いていて、その向こうに初老の夫婦が座っている。バーテンダーから見て、右手である。どちらも1杯ずつ嗜んだ後だろうか、おもむろにバーテンダーが口を開く。
(初老の男性に向かって)「○○さん、ご紹介します。こちら△△さん。(中略)□□にお住まいの方ですよ」
初老の男性「おお、そうかね。ワシの家のすぐ近くじゃないか」
バーテンダー「△△さん。あちらのご夫妻はMr.○○とMrs.○○。(中略)Mr.○○は元開業医で、今はご子息に家業を譲り、今は悠々自適の生活をなされていて、こちらへも時々お見えになります」
青年「ああ、僕も本当は医者になりたったんですよ。大学でも医学を専攻していたんです。家庭の事情があって、断念してしまったのです」
初老の男性「おお、そうかね。これも縁だ。家も近いようだし、今度遊びに来なさい」
初老の女性「ええ、是非ともおいでなさい。歓迎しますよ」
 すでにバーテンダーはそこから離れている。
 常連客いわく、
「ここの店の客たちはみんな友達さ。年齢も、国籍も、職業も、地位も一切関係なく、ね。会ったばかりの奴でも、そいつがどんな人間なのかようく知っている。もう長年連れ添った親友、夫婦、家族みたいにね」
 説明は不要でしょう。

 -  ☆  -  ★  -  ☆  -  ★  -

 「これぞ世界一のバーテンダー、という人物は誰だと思う?」と言われたら、私は二人の人物を挙げる。一人は・・・今回は省く。いずれ挙げたいと思う。
 もう一人は、Harry = Craddock 【ハリ-・クラドック】。
 1920~30年代前半、ロンドンの Savoy Hotel 【サヴォィ・ホテル】にある the American Bar【ジ・アメリカン・バー】でバーテンダーを務めた人物。まずは彼の開発したカクテルを見ましょうか。
 
 Alaska 【アラスカ】。Liqueur その1 - Chartreuse 【シャルトリューズ】で紹介しましたが、もう一度。

Alaska 【アラスカ】
基酒:Gin 【ジン】
技法:シェーク
度数:39度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
[Beefeater] Gin 【[ビーフィーター] ジン】 3/4
Chartreuse (Joune) 【シャルトリューズ(ジョーヌ)】 1/4

  -  ○  -  ● -  ○  -  ●  -  ○  -  ●  -  ○  -

 そして、
Broadway - Thirst 【ブロードウェイ・サースト】
基酒:Tequila 【テキーラ】
技法:シェーク
度数:16度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
Tequila 【テキーラ】 1/2
Orange- Juice 【オレンジ・ジュース】 1/4
Lemon - Juice 【レモン・ジュース】 1/4
砂糖 1tsp.

 「ブロードウェイの渇き」という意味。「ブロードウェイを渇望する」という意味も。ニューヨークの観劇街・ブロードウェイでの観劇で興奮した喉の渇きを潤すという意味と同時に、「いつかブロードウェイを飲み干してやる」という渇望の意味も込められているようだ。

  -  ○  -  ● -  ○  -  ●  -  ○  -  ●  -  ○  -

 そして、そして、
Mexican - Cocktail 【メキシカン・カクテル】
基酒:Tequila 【テキーラ】
技法:シェーク
度数:20度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
Tequila 【テキーラ】 1/2
Pineapple - Juice【パイナップルジュース】 1/2
Syrop de Grenadin 【グレナディン・シロップ】 1dash.

 「メキシコのカクテル」という意味。メキシコのテキーラを使っているという、それだけのカクテル。

  -  ○  -  ● -  ○  -  ●  -  ○  -  ●  -  ○  -

 さらに、
Rob - Roy 【ロブ・ロイ】
基酒:Scotch 【スコッチ】
技法:ステア
度数:32度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
Scotch 【スコッチ】 3/4
Sweet - Vermoute 【スウィート・ヴェルモット】 1/4
Angostura - Bitters 【アンゴスチュラ・ビターズ】 1dash.

 サヴォイ・ホテルで毎年11月に開かれている聖アンドリュー祭のパーティーで出されたものです。ロブ・ロイは「赤毛のロバート」ことロバート=マクレガーの愛称。18世紀のスコットランドにおいて、盗賊でありながら得た利益を貧乏な人たちに配った義賊として、スコットランドでは子供でも知っているという歴史上の人物です。

  -  ○  -  ● -  ○  -  ●  -  ○  -  ●  -  ○  -
 
 続いて、
Leap - Year 【リープ・イヤー】
基酒:Gin 【ジン】
技法:ステア
度数:39度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
Gin 【ジン】 40ml
Orange - Curaçao 【オレンジ・キュラソー】 10ml
Sweet - Vermoute 【スウィート・ヴェルモット】 10ml
Lemon - Juice 【レモン・ジュース】 1dash.

 「閏年【うるうどし】」という意味。その名の通り、閏年のパーティーのために作られたカクテル。

  -  ○  -  ● -  ○  -  ●  -  ○  -  ●  -  ○  -
 
 最後に、
Singapore - Sling 【シンガポール・スリング】
基酒:Gin 【ジン】
技法:シェーク
度数:17度
グラス:タンブラー
レシピ
Gin 【ジン】 45ml
Cherry- Brandy 【チェリー・ブランデー】 30ml
Lemon - Juice 【レモン・ジュース】 20ml
Soda 【ソーダ】 適量


 シンガポールの名門ホテル「ラッフルズ・ホテル」で誕生したカクテル。実はここに鍵がある。

 上記の各レシピを見て、肩透かしをくらった気分に陥らなかっただろうか? 実に単純なレシピばかりである。しかも「ロブ・ロイ」は「マンハッタン」の基酒をライ・ウィスキーからスコッチに替えただけである。
 「何だ、誰でもできるじゃん」
 という感想を持ったのなら、それは見事なまでにクラドックの術中にはまっているのである。特に最後の「シンガポール・スリング」、一般に広まっているのはこのアレンジ版で、オリジナル・レシピが存在する。
 ここで、面白いものを見つけたので紹介しましょう。
 Oxo Tower Bar and Brasserie のヘッド・バーテンダー、Diego Garcia 【ディエゴ・ガルシア】氏による「ラッフルズ・シンガポール・スリング」講座です。

 「シンガポール・スリング作成講座」←こちらをクリック。

 1905年に作られたこのレシピは、使う材料が多く、手順も面倒。悪くはないが覚えづらく、人気はさほどでもなかった。(それよりもこのビデオを見て、計量やシェークの方法に驚くかも知れませんね。これらのグッズは日本ではあまり見かけませんが、アメリカの通販ではたくさん転がってます。中には○○カクテル専用、なんてもあったりして。余談でした)
 これを簡略化したのもクラドック。
 となると、見えてきました。ハリー・クラドックの目指したもの、そしてなぜに彼が今なお畏敬の念を集めているか。
 シンプル・イズ・ベスト、ということ。彼は常に「主役はあくまでもカクテルであって、バーテンダーが目立ってはいけない」と考えていたようで、手順が複雑なだけのカクテルや、ケレン味の強い見掛け倒しの技法などを嫌い、お酒の持つ特徴を活かすこと。そして、お客さんに楽しい空間を提供すること。これらを心掛けていたようだ。

 シンプル・イズ・ベスト。これは言葉の響きが良い反面、貫くのが難しい。オリジナル、あるいはアレンジとしてカクテルを作る場合、ついつい余計な材料を使ってしまう、混ぜなければ良かったという材料もある、ステアよりもシェークの方が格好いいような気がする、混ぜたために飲むに絶えない出来損ないに仕上がってしまう場合もある。
 真正面から向き合う。余計なことを避ける。本質を知る。研鑽を怠らない。自分に打ち勝つ。
 書くのは簡単だが実行が難しい。
 すべて変化球で逃げようと思えば、できる。変化球の方が何となく格好いいような気もする。でも直球がなければ、変化球はまったく生きない。
 誤解を怖れず、嘲笑を怖れず、真っ向から戦う。

 これぞ本格。



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