スポンサーサイト

Posted by 倖成卓志 on --.-- スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Whisky - その7 何故ベッシーに頼んだのか? (Why did he ask Bessie?)

Posted by 倖成卓志 on 10.2008 至福のウィスキー 2 comments 0 trackback
 私の、ウィスキーへの評価をガラリと変えた一品があります。


 それまでのウィスキーの印象といえば、

 とにかく高い。年配の方、オヤジが飲むもの。強すぎて飲みづらい。
 「ロックは格好を付けてるだけだ」とか、「水割りで飲むのは邪道だ」とか、「ストレートで飲む奴はただの気取り屋だ」とか、こだわりが強い上にん、なにやら悪口も多いようだ。

 そんな印象。


 私の場合、意識的に飲んできたのは、
 Wild - Turkey 【ワイルド・ターキー】 JOHNNY - WALKER 【ジョニー・ウォーカー】 の赤と黒→ Ballantine 【バランタイン】 のFinest 【ファイネスト】→ MACALLAN 【マッカラン】 の10年、12年、といった流れで来ているので、最初のものを除けば、比較的飲みやすいウィスキーばかりなのです。

 マッカランを飲んだ後はしばらくバーボンを探索していました。それからスコッチのブレンデッドへ移行。考えてみれば「優しい」ウィスキーばかり飲んでいたわけです。
「マッカランの味が分かるなら・・・お酒も強いみたいだし、これなんてどう?」
 行きつけの飲み屋で、とある大学の先生から勧められたウィスキー。飲んだ瞬間、
「草の香り?・・・海・・・というか、海の近くの草原を、馬の群れが駆けて行ってるみたい・・・」
「ああ、いい表現だ。分かるんだね」
 今だから言える、強烈なスモーキー・フレーヴァー。激しいまでのピート香。海を感じさせるヨード香。それらが余韻となっていつまでも残っている。アイラの特徴を前面に打ち出してくるこの印象の深さ。

 そのウィスキーとは・・・。
  -    Ψ    -    Φ    -    Ψ    - 



 趣向が、麦の醸造酒であるビールから、同じく麦の蒸留酒であるウィスキーに移行するという手順を踏んだ場合に、必ずこの酒を以ってモルト派への転換を完了させるという、

LAPHROAIG10

LAPHROAIG
 【ラフロイグ】


LAPHROAIG10(label)


 ゲール語で、『広い湾の美しい窪地』という意味です。

 1815年、ドナルド&アレックスのジョンストン兄弟がアイラ島南部の海岸に蒸留所を設置したのが始まり。
 初代オーナーのドナルド=ジョンストンは1847年、発酵槽へ転落し、その2日後に亡くなるという不幸の歴史を背負っています。

 1954年に一族としては最後の経営者となるイアン=ハンターから、同社の秘書であったエリザベス=リーチ=ウィリアムソン(愛称はベッシー)に経営権が譲渡されることになります。

 こういった譲渡の形は非常に珍しい。

 ジョニーウォーカーも、バランタインも、国際市場への進出期を迎えて、同族企業の枠を外すために敢えて経営権を一族とは無関係の企業に買収した例は多いのです。しかし、ベッシーは一族ではないどころか、他の企業でもなく、当初は本当にただの秘書だったのです。


 何故こんな事が起きたのか?

 1932年にグラスゴー大学薬学部を卒業したばかりのベッシーは、職が見つからずにパートタイムで秘書をしていました。翌1933年、大学時代の友達にその故郷であるアイラ島へ旅行に誘われました。
 「ねえ、ベッシー。どうせ次のパートタイムも見つかってないことだし、ヒマでしょう? 気晴らしに私の故郷に来ない? アイラ島ってとこなんだけど」
「ふうん、アイラ島ねえ。どんなとこかしら? 行ってみるのも悪くないかもね」
 その時、たまたまラフロイグ蒸留所の秘書が急病で、臨時秘書の募集をかけていました。
「ねえ、ベッシー。ウィスキーの蒸留所で、ラフロイグ蒸留所ってとこがあるんだけど、そこで秘書のパートを募集してるみたい。3ヶ月だって。こう言うのも何なんだけど、あなた、ヒマでしょ? お金とか無いと困るでしょうし。速記とか得意だから、多分すぐに採用されるとおもうんだけど」
「ウィスキーねえ。授業で蒸留の仕組みとかは習ってたし、蒸留所をこの目で見てみるのも悪くないかも。そうね・・・3ヶ月だけなら、やってみようかしら」

 上記のセリフは私の創作ですが(「友達」も性別は書かれていませんが多分女性でしょう)、ベッシーがラフロイグ蒸留所のパート秘書に応募したのは、特に何か深い考えがあったわけではないのは事実のようです。


 ところが世の中、何が起こるのか分からないもので、イアンの御眼鏡にかなった彼女は、彼によってラフロイグの技法を余すところなくすべてを教えられていくのです。
 イアンはそんなにも気前の良い人物だったでしょうか。
 私はそうは思いません。

 彼を示唆する言葉に「厳格な秘密主義者だった」とあります。

 とにかく、写真家やマスメディアの関係者が蒸留所に近付くのを嫌ったと言われています。
 人を毛嫌いして寄せ付けず、プライベートは明かさない。いざというときにも、いやいざという時だからこそ他人を信用できない、自分の持つ技術も軽々しくは教えたがらない、頑固なまでの秘密主義の人間・・・そして、間違いなく、仕事熱心であることと、ラフロイグに対する深い愛情があるということ。得てしてこういう人物は、自分と相性が合う数少ない人間と出会った途端、自分のすべてを解放する。性別も、国籍も、民族も、履歴も、そんな”くだならいもの”など一切関係なく、ただ互いに理解できる存在として心を触れ合うことが出来るのではないのか、と思うわけです(なぜなら、私自身もそういう部分があるので、イアン=ハンターの気持ちは分からないでもないのです)。

 その、心許せる、感性のピッタリ合った相手がベッシーだったというわけ。

 もちろん相性だけでなく、彼女の仕事に対する誠実さ、ラフロイグに対する情熱なども大いに買ったわけです。一方でベッシーも、その頑固で、それはつまり仕事に対して真面目であり、熱心であるところに惹かれたのでしょう。病気で休んでいた秘書が戻った後でもイアンはベッシーを手放すことはなく、1946年には彼女を蒸留責任者とします。やがて1954年、イアンの遺言により、蒸留所を始めとするラフロイグのすべてはベッシーに委ねられました。

 これより彼女は1972年に引退するまでの22年間、ラフロイグの経営に当たり、「モルト・ウィスキー界において最も偉大な人物」と賞賛されるようになっていくのです。

 ラフロイグのHPでは、彼女の紹介にあたって、
Bessie Williamson , who came to Laphroaig for 3 months and stayed for 40 years...
 と称しています。


 1962年。ラフロイグをシーガー・エヴァンス・グループ傘下のロング・ジョン・ディスティラーズ社に売却します。これは他のウィスキー会社同様、国際競争力を付けるためでした。

 ずっと時間は過ぎて、1994年にはアライド・ドメック社の傘下となり、運営は ADV 【アライド・ディスティラーズ】 社に委ねられ、2005年7月26日にはペルノー・リカール社とフォーチュン・ブランズ社によるアライド・ドメック社の買収により、蒸留所の所有権はフォーチュン・ブランズ社が取得することになります。

 ちなみに、1994年には王室のチャールズ皇太子がラフロイグ蒸留所を訪問し、これ以降「Lord of the Isles 【ロード・オブ・アイラ】」(「君主のアイラ」とも)の別名を持つことになります。


  -    Ψ    -    Φ    -    Ψ    - 



 アイラ・モルトで「ピート香」という言葉がよく出てきます。「ピート」というのは「泥炭」のことです。通常であれば、植物などが生命を終えて土壌で分解されると石炭になるのですが、湿地帯などでは死後の植物はすぐに水に浸ってしまいます。そうなると、微生物は酸素不足から十分な分解を行うことができず、「泥状」の中途半端な石炭になってしまいます。この泥炭は燃焼効率が悪いため、先進国では燃料として使われることは稀です。
 蒸留所では、大麦麦芽(モルト)を乾燥させるためにこれを使うため、特にアイラ・モルトでは植物の醗酵したような香りが付くというわけです。
 ラフロイグのピートは、燃料として使えるように、夏場に涼しい浜辺の風にあおられるようにして乾燥させています。このピートで麦芽を乾燥させるために独特のヨード香(潮や海草の香り)が付くというわけです。


 さらに「フロア・モルティング」をいまだに続けているということ。

 これは原料である大麦を水に浸し、コンクリートの床に広げ、「スキップ」と呼ばれる木製のシャベルで撹拌する作業のことです。すべての大麦に均等に空気が触れるように、約10日ほどにわたって延々と繰り返す、見た目よりもはるかに重労働の内容です。この作業をする人を「モルトマン」と呼びます。昔はどこの蒸留所でも行っていたのですが、現在はかなり減っています。

 ちなみにフロアモルティングをしていない蒸留所では、「モルトスター」と呼ばれる専門業者に頼んでいます(「製麦工場」とも訳されます)。モルトスターでは機械を使っていますが、依頼してくる蒸留所によって方法をきちんと変えているので必ずしも手抜きというわけではないようです。
 代表的なモルトスターはPORT ELLEN 【ポートエレン】 蒸留所で、1983年に休止してからはモルトスターとしてのみ稼動しています。


 ラフロイグの仕込用水はサーネイグ・バーンという小川の水。
 そして熟成に使われるのはバーボン樽です。
 スコッチの熟成に主に使われる樽は大きく分けて2つあり、シェリー樽バーボン樽です。前者を使うのはスペイサイド地方やローランド地方などで、比較的穏やかな性格の酒となり、後者を使うアイラ地方のものは比較的激しい性格となるというわけです(例外もいくつかありますが、大まかにはそうなります)。


 この「10年」は、スモーキー・フレーヴァー(燻煙香)が強烈で、さらに上記に示したように潮の香りも付いて、辛口の仕上がりとなっています。フィニッシュ(後味)は長く、一度飲んだら忘れられない味わい。

 最後にちょっとオイルっぽい香りが付いてきますね。
 「バラの成分の入ったガムを噛み続けると、身体からバラの香りが漂ってくるようになる」と、誰かが言っていましたが、連日ラフロイグ10年を飲んでいたら、自分の身体から海草とオイルの混じったような香りがかすかにするようになっていたのは気のせいなのかな。


 好きな人は激しく好きになり、嫌いな人は激しく嫌う一品です。

 嫌いな人は「消毒液のにおい」とか「薬くさい」と言いますが、好きな人は「パワフルで、しかしバランスが良い」とか「病み付きになる」「これぞまさにアイラ・モルト」などと評します。


  -    Ψ    -    Φ    -    Ψ    - 



 さて、

 「アイラ・モルト」の解説で、「ラフロイグは強烈すぎるので初心者には向かない。Bowmore 【ボウモア】BRUICHLADDICH 【ブルイックラディ】 などから入るのがよい」という意見があります。

 私は、それは必ずしも良い解説とは思えません。
 始めにボウモアやブルイックラディに出会った人が「アイラ・モルトとは何か」ということに興味を抱いて、ラフロイグや ARDBEG 【アードベッグ】CAOL ILA 【カ・リラ】 に移行するなら構いません。そちらに勧めるのも悪くありません。

 しかし、まったく初めてのスコッチ、あるいは初めてのアイラなら、是非ともラフロイグから入って欲しいものです。
 もし試しに飲んでみて、ダメならダメで一向に構わないのです。「自分には合わない」とはっきり主張されてもいいのです。いや、おそらく10人いたら少なくとも5~7人ぐらいまでは「絶対にダメ。自分には無理」と答えることでしょう。しかし、そこで何かを感じてもらいたいものです。なるほど、こういうウィスキーもあるのか、と。

 「ラフロイグがきついなら」ということで、「それよりもヨード香の弱いボウモアというのがあるけど、これは飲みやすいよ。どう?」とか「ローランドの柔らかいウィスキーはどうかな?」などと勧めてみるのも良いかも知れませんね。

 いや、そもそも初心者向けという表現は、ボウモアやブルイックラディに失礼というものです。私がブルイックラディの10年を初めて飲んだとき、アイラと気付かず、いやブレンデッドかなと思わせるぐらいに柔らかく、スモーキーさもヨード香もあまり感じられず、しかし何ら不満を覚えさせるような代物ではありませんでした。ボウモアも、ブルイックラディも、それぞれに「本物」なのです。
 「比較」としてではなく、「単体」で勧めるべき代物。


 ラフロイグを好きになってもらえればそれに超したことはないのです。

 ラフロイグの持つピート香、ヨード香。知ったかぶりは、せめて飲んでから。


  -    Ψ    -    Φ    -    Ψ    - 



 今回のこの記事を機に、ラフロイグのメンバー(FOL:Frend of LAPHROAIG)に登録してきました。ボトルの商品バーコードがあれば、誰でも会員になれます。
 「2004年の時点で、150か国、25万人の会員がいる」とのことですが、32万ちょっとの番号を頂いたので、もっともっと増えているようです。
 英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、スウェーデン語などには対応しているのですが、残念なことに日本語には対応していません。でも日本人の会員も多くて驚きでした(まだ交流はしていませんが)。


 久々に、長い回となりました。私のウィスキー感は、ラフロイグで目覚めたと言っても過言ではありません。最初は「こんな酒が存在するのか!?」、今は「こういう酒がもっと存在すべきだ!」。
 しかし実は、まだひとつだけ言い足りないウンチクがあります。それはまた近いうちに。



←ブログランキングです。ご協力お願いします。



「ブログ・ルポ」評価ボタン(どれか押してもらえると嬉しいです)
この記事に点数をつける


 
スポンサーサイト

あまりバーでウィスキーだけを飲むってことは、あまりしていないのですが、このラフロイグやアードベッグは飲んだことあります(^^)感想は。。普通に個性があっていいなって感じです!ソーダで割って飲むのが好きですね♪しかし『FOL』なんてものがあるとは、知りませんでしたf(^^);
実は、nao.のブログにこの『ラフロイグ』を使ったカクテルを紹介しています(^^)/くわしいレシピまでは不明ですが、チョコレートリキュールも使っているので、『ちょっと変わったバレンタイン』にいいかもしれません♪
2008.02.12 07:44 | URL | nao. #- [edit]
>nao.さん

 アイラ・モルトは「分かりやすい」のがいいですね。久々に飲むとすごく刺激的で、まさに「非日常的」。なんでこんな「不思議な酒」が存在するんだろう、って感じで。

 チョコレート・リキュールとの組み合わせは驚きです。ウィスキー・ボンボンの『逆』って考えでいけば「それもアリ」なのでしょうけど、何故にラフロイグ(笑)。アイラ好きに勧めたらすごく喜ばれそうですね。
2008.02.18 20:50 | URL | 倖成 #iqhSIKS2 [edit]


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://ktka.blog56.fc2.com/tb.php/189-3ef0d954

プロフィール

倖成卓志

Author:倖成卓志
 いざ、霊薬【エリクシル】を求めて・・・

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。