十五夜お月さんを見て跳ねるのはウサギさんですが、日本人はお月さん、特に満月をしみじみと眺めるのをよしとします。
中でも、陰暦8月15日は「中秋の名月 【ちゅうしゅうのめいげつ】」、あるいは「十五夜」と呼ばれ、ススキを飾り、団子や餅などをお供えします。
中国ではこのお月見の時に月餅 【げっぺい】 を食べますが、里芋を食べる地域もあります。そのため、元々は里芋の収穫を祝う祭りだったのではないかとも言われています。これに由来してか、「芋名月」の別名もあるようです。
陰暦は太陰暦、太陰太陽暦、あるいは旧暦とも呼ばれ、月の運行を元に作られた暦です。1年は約360日です(年によって微妙に変わる)。
現在のグレゴリオ暦は太陽暦とも呼ばれ、太陽の運行を元に作られたものです。1年は365日ですね。そのため、「陰暦○月○日は、太陽暦では○月○日である」と断定することはできません。年によって微妙に変わっているからです。
ちなみに今年の陰暦8月15日は、太陽暦9月14日です。
もうひとつ、陰暦9月13日は、「後の月」とか「十三夜」などと言い、同じように名月を眺め、お供えをします。この時、団子は一緒ですが栗もお供えします。「栗名月」ともいいます。これは日本独自の風習で、中国にはありません。一般には「十五夜」が主ですが、「十五夜」と「十三夜」の両方を行わなければならないという習慣を持つ地域もあります。
Cocktail - 第26回 フルム−ン・パレス(Fullmoon Palace)
名月をとってくれろと泣く子かな (小林一茶)
辺り一面すっかり暗く、そんな闇夜にぽっかりと浮かぶ、ほのかに輝く満月。子供が右手を伸ばしています。手のひらは、スッと空を切ってしまいました。今度は左手です。でも、つかめません。はてな、と思いながら今度は意を決して飛び上がっていました。それでも、丸くて綺麗なそれを、どうしても捕らえることができません。届きそうなのに、すぐそこにあるのに。言い知れない悲しさがこみ上げてきて、思わず涙が溢れかえってしまいそう。
素朴で、純真で、どことなく風雅な光景です。
この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば (藤原道長)
こちらは可愛げも、素朴さの欠片もない、傲岸不遜な歌です。藤原道長の実績、歌の意味などについてはあえて省略します。彼の娘である威子が皇后となった日に、自宅へ貴族たちを集めてこの歌を詠んだと、藤原実資 【ふじわらのさねすけ】 の『小右記』という書物に書かれています。道長が実資にこの歌の返歌を求め、実資は「素晴らしい歌なので、返歌はできません。みなでもう一度高らかに詠いましょう」と言い、その場にいた貴族たちでこの歌を何度も詠み上げたといいます。
一言だけ付け加えるならば、実資はこの時代には珍しく理性的で、現実的な人で、道長に逆らい、『小右記』はまさに道長の政治を徹底的に批判したものです。道長を「大不忠」とまで言い切っています。つまり、そんな実資にあえてこのような傲慢な歌の返歌を求めた道長の意図は、「言いたいことがあるならここで言ってみろ」という嫌がらせ以外の何でもありませんね。
Full - Moon 【フル・ムーン】
基酒:Liqueur 【リキュール】
技法:ビルド
度数:29度
グラス:オールド・ファッションド・グラス
レシピ
Orange - Curaçao 【オレンジ・キュラソー】 45ml
Amaretto [Almond Liqueur] 【アマレット】 45ml
ちょっと嫌な気分になってしまったかも知れませんが、せっかくのお月見です。気を取り直していきましょう。
さて、日本や、中国では満月は「愛でるもの」「見て楽しむもの」。しかし、西洋ではどうでしょうか。
月の女神といえば、ギリシア神話では「アルテミス」(最高神ゼウスの娘)ですが、元々は「セレネ」という女神がその役割で、シェークスピアの『マクベス』にその名が登場する「ヘカテー」もまた月の女神です。「純潔」のアルテミス、「出産」のセレネ、「育児」のヘカテー。月が様々な顔を持つように(新月→満月→新月、に至るまで形が変わっていくということ)、月の女神もまた様々な顔を持つ神という認識になっているようです。
また、月光は、人の心を惑わせるものと解釈される場合もあります。有名なのが狼男で、普段は人間の姿なのに満月を見ると狼に変身してしまうのです。これを、いつもはまともの人なのに、月光の影響で気が狂ってしまった、と解釈する向きもあります。
また、タロット占いで「月」のカードは、「二面性」「裏切り」「水難事故」などを表し、やはり良い印象はないようです。
このように、あまり良い印象はなくても、闇夜をほのかに照らす月光に幻想を抱いたり、安らぎを求める傾向がないわけではありません。
月に関わる歌も多く残されていて、たとえば『Moon River 【ムーン・リヴァー】 』という名曲があります。
映画『ティファニーで朝食を』で、主演のオードリー=ヘプバーンが歌い、アカデミー賞を受賞しています。後にルイ=アームストロングやフランク=シナトラ、サラ=ヴォーン、日本では小田和正、渡辺美里といった、早々たる面々によってカヴァーされ、今尚歌い継がれています。
Moon - River 【ムーン・リヴァー】
基酒:Liqueur 【リキュール】
技法:シェーク
度数:25度
グラス:ゴブレット
レシピ
Apricot - Brandy 【アプリコット・ブランデー】 1oz.
Gin 【ジン】 1oz.
White - Curaçao 【ホワイト・キュラソー】 1oz.
Galliano [herbal liqueur] 【ガリアーノ】 1/2oz.
Lime - Juice 【ライム・ジュース】 2/3oz.
Blue - Curaçao 【ブルー・キュラソー】 1/3oz.
Sugar - Syrup 【シュガー・シロップ】 1/2oz.
ブルー・キュラソー以外をシェークさせたらゴブレットへ注ぎ、上からブルー・キュラソーを流し入れる。
小中学、高校などでブラスバンドを経験したことのある人ならたいていは、その名を耳にしたことのあるトロンボーン演奏者・Glenn Miller 【グレン=ミラー】。彼の名曲の一つが、
『Moonlight Serenade 【ム−ンライト・セレナーデ】』
グレン=ミラーといえば『In The Mood 【イン・ザ・ムード】』、『Little Brown Jug 【茶色の小瓶】』、そして『String of Pearls 【真珠の首飾り】』など、題名だけでは分からないかも知れませんが、聞けば「ああ、どこかで聞いた覚えがある」という曲ばかりです。軽快な曲想は「スウィング」と呼ばれ、近年では映画『スウィング・ガールズ』で再び流行になりましたね(この映画の中で、グレン=ミラーのものでは『ムーンライト・セレナーデ』と『イン・ザ・ムード』が登場。他には『A列車で行こう』や『キャラバン』などスウィング好きにはたまらないナンバーが目白押し)。吹奏楽コンクールの自由曲や、文化祭などでは必ずといってよいほど1曲は登場します。時代を超えて愛されている分野です。
『ムーンライト・セレナーデ』はゆったりとした曲調で心を落ち着かせてくれます。
Moonlight - Serenade 【ムーンライト・セレナーデ】
基酒:Liqueur 【リキュール】
技法:シェーク
度数:9度
グラス:ハイボール・グラス
レシピ
[Bols] Orange - Liqueur 【[ボルス] オレンジ・リキュール】 1/3
Orange - Juice 【オレンジ・ジュース】 2/3
最後にオレンジのスライスを飾る。
Honeymoon 【ハネムーン】。漢字で書けば「蜜月」。新婚旅行を意味する言葉ですが、最近ではあまり聞かれなくなりましたね。半死語化している言葉なのでしょうか。
蜜のように甘い。ある人たち(男女とは限りません)が非常に親しい時間を「蜜月の期間」とか、ある国同士が非常に親密である時を「蜜月の関係」などと言い表しますね。
新婚もこれと同じかというとどうやらそうではなく、子孫繁栄を願って蜂蜜酒(ミード)を飲んだことから、そう呼ばれるようになったそうです。
Honeymoon- Cocktail 【ハネムーン・カクテル】
基酒:Liqueur 【リキュール】
技法:シェーク
度数:26度
グラス:カクテル・グラス
レシピ
Apple - Brandy 【アップル・ブランデー】 3/4oz.
Benedictine [herbal liqueur] 【ベネディクティン】 3/4oz.
White - Curaçao 【ホワイト・キュラソー】 1tsp.
Lemon - Juice 【レモン・ジュース】 1/2個分
英語レシピをそのまま引用したので、分量が少し分かりづらいですね。レモン1/2個を絞ってジュースにすると約30mlとなるらしいです。名前に押されて、このカクテルは残念ながら飲んだことはありません。とあるバーテンダーさんは、ホワイト・キュラソー以外を1/3ずつにして作っているようなので、飲んでみたい方はそちらで挑戦してみてください。
ジューヌ・ヴェルヌの『月世界旅行』は、巨大な砲弾を作ってその中に入り、大砲を使って月へ行こうとするお話です。実際には、砲弾を信じられないぐらいに加速(11.2km/s)させなければならない、大気圏があるので砲弾は燃え尽きてしまう、などあまりにも非現実的です。
「昔の人はバカなことを考えてたんだなあ、あははは」・・・などと笑い飛ばさず、こんな突拍子もない話を真剣に、現実に考えた人たちがいました。大気圏に耐える、のは材料でなんとかなる。しかし、そのままでは加速が足りない。では逆に、大砲の先を下に向け、大砲にまたがった状態で下へ砲弾を撃てばどうなるか。つまり、打ち上げてもらうのではなく、下に向かって砲弾をどんどん撃つようにすれば、大砲(とそれに乗っている人)はどんどん加速していくんじゃないか・・・。実はこれがロケットの発想の原点とされています。
ホメロスの『イリアス』をただの空想物語と考えず、トロイア発掘を成し遂げたシュリーマンのように。
ロケットを発明した人たち(規模が大きいので、個人の発明家というよりも、たくさんの国のたくさんの人たちによって共同開発されていきました)は、周りからは時に空想的、非現実的と小ばかにされ、中には詐欺師呼ばわりされながらも、研究と実験を重ねて、現代の私たちにロケットや宇宙への道筋を与えてくれました。
昔の人たちの、憧れの地。
時代がいくら代わろうとも、美しく、妖しく輝きつづける夜空の月を、無心で眺めるのもまた一興です。

「ブログ・ルポ」評価ボタン(どれか押してもらえると嬉しいです)
この記事に点数をつける
「 Cocktail - 第26回 フルム−ン・パレス(Fullmoon Palace) 」へのコメント
>栗色の息吹さん
どこであろうと、どんな場面であろうと、人はそれぞれに思いに耽るもの。あるいは騒ぎ、あるいは静かに、あるいは穏やかに。その自由な空間を、自由なカクテルが寄り添って一輪の花のごとくとなれば、これまた嬉しいものです。
難点は、最後以外はカクテルとしてはドマイナーだっということで(苦笑)。
どこであろうと、どんな場面であろうと、人はそれぞれに思いに耽るもの。あるいは騒ぎ、あるいは静かに、あるいは穏やかに。その自由な空間を、自由なカクテルが寄り添って一輪の花のごとくとなれば、これまた嬉しいものです。
難点は、最後以外はカクテルとしてはドマイナーだっということで(苦笑)。
「 Cocktail - 第26回 フルム−ン・パレス(Fullmoon Palace) 」へのトラックバック
http://ktka.blog56.fc2.com/tb.php/213-8b8e9efc



月が美しい夜に、バーで月の話をしながら月にまつわるカクテルを愛でる。
そんなカクテルの楽しみ方もあるのですね。
そして、酔い覚ましに歩道橋の上からゆっくりとした時間が流れるのを感じながら満月を眺め感慨にひたり、
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
と呟いてみたいものです。(笑)