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Cocktail - 第32回 ある市の可能性(La possibilité d'une ville)

Posted by 倖成卓志 on 22.2009 悠久のカクテル 0 comments 0 trackback
 質問:
 初めてバーへ入りました。カウンター席に腰を下ろして、「よろしければ、どうぞ」とカクテルのメニューを出されたのですが、見たことのない名前ばっかりがずらりと並んでいて、どうしたらいいのか分かりません。どうすればいいのでしょうか?


 答え1:
 バーテンダーさんに聞いてみてください。
 メニューを指差して、「これはどういうものなのでしょうか」と。
 あるいは、好みを伝えて相談してみましょう。オーセンティックな(【authentic】。「正統派」という意味の)バーではメニューを出さないのが普通とされていますが、現在ではスタイルは様々で、カジュアルな雰囲気のバーではむしろ積極的にメニューを出しているところもあるぐらいです。しかしメニューにだけ頼らずに、「まだ何も食べてないので、そんなにアルコールの強くないものを」「甘くて、でもさっぱりしたもの」「フルーツを使ったものが美味しいって聞いて来たんですよ」。カクテルは組み合わせの種類が豊富なので、バーテンダーさんとは飲みたいカクテルの相談を受けてくれる人でもあるので、遠慮などいりませんよ。

 しかし、初めてであれば、「相談して決める」という感覚は分かりづらいかも知れませんね。
 カフェで「これって何ですか」という程度ならともかく、「私は何を飲みたいのか分かりません。どうしましょう」という人はあまりいないでしょう。副材料がトッピングできるカレー屋さんで「海鮮系で、ボリュームがあって、でもあまりくどくなくて、そういうのを2個。それから野菜もどれか1つ適当に選んでくれる?」というオーダーをする人はあまりいないでしょう。

 慣れていないと、不安ですよね。「そんなことしてもいいのかな」、と。それならば、カクテルの名前をとりあえずひとつだけでも覚えておくと安心できるかも知れません。面倒なく覚えられるネーミングで、外れのないものというのなら、こちらでどうでしょうか。


 答え2:
Kir
Kir 【キール】

 基酒:Wine 【ワイン】
 技法:ビルド
 度数:14度
 グラス:ワイン・グラス

 レシピ
 Wine (white) 【ワイン(白)】 4/5
 Crème de Cassis 【カシス・リキュール】 1/5
  -    ☆    -    ☆    -    ☆    -    ☆    - 


 このカクテルが作られたのは、1945年頃とされています。
 フランスのコート・ドール県の県庁所在地がディジョン市です。ここにはいくつかの名物がありました。ひとつが香辛料のマスタード(洋ガラシ。ただし、アメリカに出回っている「Dijion Mustard」なるもののほとんどはその名を冠しただけの別物です)。ひとつが黒スグリ(カシス)。
 当時、ここの市長だったキャノン=フェリックス=キール氏が、いわゆる町おこしのために考案したカクテルとされています。
 ブルゴーニュ地方の白ワインは辛口で酸味が強く、かつてはあまり人気がありませんでした。しかもディジョンでは、アリゴテ種というそれほど品質の高くないブドウを使っていたので、誰も見向きもしませんでした。

 しかしキール氏は、この白ワインと、黒スグリから造ったリキュールとを組み合わせることを思いついたのです。これなら地元のものだけで作れるから地元の活性化に繋がる。そしてある日の、市の晩餐会で出したところ、非常に高い評価を受け、現在では世界中で知られるレシピとなりました。
 一説では、ナチス・ドイツの占領により物資が不足していた折、晩餐会で出すシャンパンの代用品を捜し求めているうちに、これを考え付いたともされています。


 ただ、このカクテルが日常的に飲めるようになった現代では、贅沢になったのか、こんな批評も見受けられました。

 ひとつは、このカクテルでよく使われている Bourgogne - Aligote 【ブルゴーニュ・アリゴテ】 の評価がとても低いということ。「キール・カクテル」の普及のおかげかどうか分かりませんが、同じぐらいのレベルの白ワインよりも少々高い値が付いています。しかし、カクテル界ではともかくワイン界では「酸っぱいだけの安物で、せいぜいキールのベース」「コスト・パフォーマンスが非常に悪い。半値でももったいない」といった酷評が見受けられます。そのせいか、「キール・カクテル」自体にも「飲めないワインを何とか飲めるようにしただけのカクテル」という程度の評価しかありません。しかしそれも、造られた経緯からすれば仕方のないことかも知れませんね。とにかく白ワインを使いたかった、何とかして物資の不足を補いたかった、と。

 ただし、見受けられ「ました」と過去形で書いたように、これを逆手に取っている場合もあります。酒販店、チェーン系量販店などでは「カクテルのキールに最適」とか「カシスとの相性が最高で、キールというカクテルでよく使われる」などと、誕生から考えるとむしろ逆の情報を広告記事にしているケースが見受けられます。まあ、謳い文句とはそんなものです。


 もうひとつは、このカクテルの「甘味」です。たいていのカクテル・ブックでは「プレ・ディナー・カクテル(アペリティフ、食前酒)」となっているのですが、デザート・カクテルとして飲んでもかまわないほどに、甘口なのです。『美味礼讃』で知られるグルマン(美食家)のブリア=サヴァランも「飲み物の順序は、最も弱いものから最も強く香りの高いものへ」と言っているように、このカクテルの香り高さは食前酒としては似つかわしくありません。

 そこで、というわけでしょうか、「ピーチャー・キール」という言葉が出てきます。これは「キール」のカシスをピーチ・リキュールに変えたものです。フレッシュ(生)の桃を使って作るバーもあります。カシスに比べると、しっとりとした甘みになるので評判は良いようです。でも、これだって「甘口」ですよね?

 とても単純な話なのですが、食事の前に強い酒を飲むと胃が荒れるし、かえって食欲が減退してしまうこともあります。だから、弱いお酒の方が良いのです。では、この「甘み」はどうなのかといえば、食文化の違いですね。日本は炭水化物が豊富なので、和食のデザートは水菓子(果物のこと)で充分でした。砂糖は西暦745年に鑑真がもたらしたとされ、当時は上菓子にしか使われない貴重品でした。一般に広まるのは安土桃山・江戸期と言われています。これにより砂糖菓子が増え、以降は日本で「甘い」というと砂糖の「甘さ」をイメージするようになってきています。果物の甘さは砂糖に比べると控えめで、食前でも食欲中枢を満たしてしまうということはありません。むしろ、メインの食事に入る前に体と胃を落ち着けるのにはとても良い。キールが甘ったるいと言う時にはたいてい、食事の前に体が疲れ切っているということと、その後の食事のことを念頭に置いていないだけで、頭も体も疲労困憊していて、油が多くてソースが濃厚な肉料理の前ならとてもよろしい。ただ、リキュールの場合は糖分が高すぎることもあるので、フレッシュの桃を使ったピーチャー・キールに人気があるのもその辺りに理由があると思われます。


  -    ☆    -    ☆    -    ☆    -    ☆    - 


Kir - Royal
Kir - Royal 【キール・ロワイアル】

 基酒:Wine 【ワイン】
 技法:ビルド
 度数:14度
 グラス:シャンパン・グラス

 レシピ
 Champagnue 【シャンパン】 4/5
 Crème de Cassis 【カシス・リキュール】 1/5

 「Royal」は英仏同綴りで、「国王の」「王家の」という意味です。キールをより高貴にイメージしての名前でしょうね。
 ただ、発音は違います。英語では「ロイヤル」、フランス語では「ロワイアル」となります(発音記号を厳密にカタカナ表記するのは困難ですが)。
 シャンパンの代わりにスパークリング・ワインを使うこともありますが、シャンパンにこだわる必要はなし。スパークリング・ワインでもシャンパン製法によるものも多く、特に味で劣るというわけではないのですから、カクテルとして使うのならわざわざ高級なシャンパンを開ける必要性はありません。

 これと似たようなものに、Spurossi 【スプロッシ】があります。フランス料理のレストランではまったく見かけませんが、イタリア料理店では比較的扱われているカクテルです。カシス・リキュールの代わりにブラッド・オレンジを使い、イタリアのスパークリング・ワインである「スプマンテ」を使ったものです。

 食前のカクテルとしては、このうちどれかを好みに合わせて頼んでみてはいかがでしょうか。


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