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Beer - その10 建築家の二年(Architektur dva roky)

Posted by 倖成卓志 on 26.2009 享楽のビール 0 comments 0 trackback
 前回の記事を見ると、私がピルスナーを嫌っているのではないかと思われてしまいそうですが、そういうことはありません。
 ただ、日本の大手ビール会社が一様にピルスナーばかり造っているのはどうかと思うだけです。

 この部分、分かりづらいかも知れません。日本だけでビールを区別するときはたいてい、メーカー名とブランド名を基本としているからでしょう。
 キリンの一番搾りとか、アサヒのスーパードライ、サントリーのザ・プレミアム・モルツ、サッポロのヱビス、オリオン・・・。
 それらが何なのかと聞かれたら、「ビール」としか答えようがない。
PilsnerUrquell


Pilsner Urquell
 【ピルスナー・ウルケル】


製造国:チェコ
製造元:ピルスナー・ウルケル社
度数:4.5度

- ☆ - ★ - ☆ - ★ - ☆ -


 「ウルケル」は元祖とか源泉という意味で、まさに「ピルスナー」の原点です。日本の大手ビール会社が現在作っているビールは、ほとんどがこの「ピルスナー」タイプです。
 そもそも「ピルスナー」とは、「ピルゼンの」という意味です。「ラガービール」とは意味が異なります。また、日本でいう「ラガー」と世界的にみた「ラガー」も意味が異なります。この部分、酒屋さんのポップでも間違っているものを何度か見かけたので、後で書いておきます。

 まずは、ビール工業のこと。

 ビールの歴史は古いけれど、ビール工業の歴史はまだまだ浅いです。
 ビール発祥は古代メソポタミアと言われていますが、実は19世紀になってすら、上質のビールを安定供給できる状態ではなかったのです。
 何故か、と聞かれたら、ここで世界史の登場です。
 「工場制機械工業」という、工場を使って機械で作業する形態が登場するのは、18世紀後半のイギリスのことです。つまり、現代人は機械作業で製品が工場から出てくるのがごく当たり前のことだと思っていますが、実はまだそのシステムが出来上がってから250年程度しか経っていないのです。工業生産品が18世紀後半ならば、農業生産物が19世紀でも特に遅いとは言えないでしょう。

 まあ、私なりの解釈でもうひとつ挙げるならば、
 ワインもそうですが、おおよそ歴史のある生産品というものは、それを作るこだわりの職人というものがいます。
 今でもそうですが、「職人気質」というものがあります。「こだわり」とも言いますね。それが良い方向に作用すると、ひとつのものを徹底的に追及して、他人の追随を許さないほどの優れた作品が出来上がるものです。しかし悪い方向に作用すると、他人の意見を聞かず、新しいものを無条件に拒否してしまうことにもなりかねません。
 ワイン醸造も、現在ではそのほとんどの作業に機械が介入しています。しかしその風潮を嫌って、ほとんどを手作業で行っているワイナリー(ワイン醸造所)も多々あります。ビールも同様で、工場で作られているのが普通だと我々は思ってしまいますが、ほとんどを手作業で行っているブルワリー(ビール醸造所)も世界にはまだ多く残っています。つまり、歴史があるだけに、工業化だの機械化だのに反発する職人の力が強かったのではないかと、そう思うわけです。

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 「ピルゼン」は、チェコの町です。首都プラハから南西100㎞ほどの場所にあります。
 ここにマーティン=ステルザーという若者がいました。当時、まだビールの大量生産に不安のあったピルゼンの醸造職人たちは、これからのビールの発展を願って、このマーティン青年を修行の旅に向かわせます。彼は醸造に携わる人間であると同時に、建築家でもありました。つまり、彼に求められた最大の期待は、新たな醸造所の建築にあったのです。

 その期待に沿うように、再びピルゼンに戻ってきた彼は、旅の成果を試すべく新たな醸造所の建築に取りかかりました。それは今まで他の醸造職人たちが見たこともないような先進的な造りだったのです。
 そして、もうひとつ。彼はただの建築家ではなく、ビール醸造家でもあります。
 彼が帰郷したとき、一人の男が一緒にいました。その男はドイツ・ミュンヘンの醸造家で、先進的な ビール造りができる人でした。この二つの助けがあって、帰郷した1940年の2年後、1942年に遂に念願のビールが出来上がりました。それが「ピルゼンの」と冠されることとなる「ピルスナー」です。そして「先進的なビール造り」とは、それまで上面発酵で行われていた生産方法を下面発酵に変えることだったのです。ピルゼンにとって最大の幸運は、ヨーロッパでは水と言えば硬水がほとんどであるのに対し、ピルゼンのそれはカルシウム塩の少ない軟水だったのです。これが、下面発酵に使われる酵母にとって最高の条件だったのです。
 ピルスナーは黄金色に輝いていました。それまで、上面発酵ビールは小麦色でした。この新しい光が、下面発酵ビールが世界中に広まるきっかけとなったのです。

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 「ピルスナー・ウルケル」は、格段に旨いというわけではなく、どちらかと言うと「安心してまったりと飲める」タイプと言えるかも知れません。やや甘めで、苦みも少ないし、香りもほどほど。ただ、「初めて嗅いだビールの香りって、こんなだったような気がするなあ」と。それまで、アルコール飲料(アルコールではない)の香りに接したことのなかった子供には不思議な香り。
 写して、飲んで、実は写ってなくて、写真は空瓶のものになってしまいました。
 いろいろなビールや酒類に出会いすぎて、感動が薄くなってきたなあと感じたら、すごく気楽な気分で飲んでみるのもいい一本という感じですね。




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 余談。
 ピルスナーは、「『ピルゼンのビール』タイプのもの」と言えるでしょう。下面発酵ビールではあるものの、そのひとつというだけ。
 「ピルスナー」=「下面発酵」ではなく、「ピルスナー」<「下面発酵」。 

 ビールは発酵の状態で二つに大きく分けることができます。「上面発酵」と「下面発酵」です。これは、ビールで使われる酵母が発酵の最終段階で、「浮かぶ」か「沈む」かで分かれます。もちろん、使っている酵母が異なるのでこの結果が生まれるのです。

 元々は、上面発酵でした。いわゆる、Ale 【エール】です。
 使われる酵母は、Saccharomyces cerevisiae 【サッカロマイセス・セルビシエ】。これが活躍するのは20℃前後。発酵すると最終的に上がってきて、そこで膜を張るので「上面発酵」というわけ。要する時間が短いので重宝されてきました。

 そして、下面発酵。いわゆる、Lager 【ラガー】です。
 日本で「ラガー」というと、コクの軽い飲みやすいビールをイメージしますが、世界的には「下面発酵ビール」のことです。日本のビール規定(公正取引法:ビールの表示に関する公正競争規約)にはものすごくたくさん言いたいことがあるのですが、まあ、それは機会があれば。 
 使われる酵母は、Saccharomyces carlsbergensis 【サッカロマイセス・カールスベルゲンシス】。これが活躍するのは10℃前後。発酵すると最終的に底に沈むので、「下面発酵」というわけ。これが生まれたのはドイツ・バイエルンです。要する時間が上面発酵に比べると長いので、手作りには不向きですが、工業的には可能というわけで、折しも19世紀の工業化によってビール工業の発展に役立ちます。また条件さえ整えておけば大量生産も可能ということもあって、これが世界の主流となっていきます。

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