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Beer - その14 BUD as I wanna be 【バドがままに】(後編)

Posted by 倖成卓志 on 12.2009 享楽のビール 0 comments 0 trackback
 輸入食材店で、「ブドバー(Budweiser Budvar)」のポップ記事に「チェコのバドワイザー」と書いてあるものを見たことがあります。ブドバーのドイツ語表記が「バドワイザー(Budweiser)」と同じであることから、担当者がよく調べもせずに書いてしまったものと思われます。即刻、下げた方がいいですね。裁判沙汰になったものですから。

 前回も大雑把には書きましたが、要点だけは押さえつつも、裁判の成り行きについてできるだけ簡潔に書いていきたいと思います。
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 元をただせば、「Budweiser」という単語は、「ブジェヨビチェ(正確にはCeske Budĕjovice)村の」という意味のチェコ語「Budějovickŷ」をドイツ語にしたものです。
 この村で造られたビールは、チェコ語では「Budějovickŷ pivo」、ドイツ語では「Budweiser Bier」と冠しています。

 この部分は後でも出てきますが、重要なのであらかじめ覚えておいてください。

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 さて、アメリカ合衆国でビール醸造をしていたアンホイザー=ブッシュは、元々ブジェヨビチェの高品質なビールに憧れていて、カール=コンラッドという共同作業者の進言もあって、「バドワイザー(Budweiser Lager Beer)」という名前のビールを造りました。

 問題は、バドワイザーが巨大化して、ヨーロッパなどに進出し始めたこと。
 一方に、チェコの「バドワイザー・ビエール」があり、一方にアメリカの「バドワイザー・ラガー・ビール」(以下、この表記で統一)が存在する。どちらも冒頭の綴りは「Budweiser」。これは困るわけです。「Budweiser」という、しかも別々の会社が造ったものが存在するわけですから。

 そこで、1911年と1939年の二回にわたって、合意ができました。

☆1911年:一度目の合意
 1.チェコ醸造合資会社がヨーロッパ以外の地域でも「Budweiser」という商標を使用する権利を認めること。
 2.チェコ醸造合資会社は、その商品について全世界における販売活動をするに当たり、ビールの原産地を表す名称として「Budweiser」という文字、記号、図形、その他の符号を自社商品に付ける権利を放棄しないで保持すること。
 3.バドワーザー社は「Budweiser」の商標に関して「original」という文言を使わないこと。


 そして、チェコ醸造合資会社は一定期間、アメリカ合衆国での製造販売を禁止することを約束します。1911年12月2日、バドワーザー社はこれに対する代償として、当時の価格でチェコの通貨で3万クラウンを支払っています。

☆1939年:二度目の合意
 一定期間が過ぎて、チェコ醸造合資会社はアメリカ合衆国へビールを輸出します。これは規定になかったため、違反ではありませんでした。そのうえ、チェコ醸造合資会社はアメリカで1937年8月10日に「Budweiser Beer」という標章の商標登録を行います。
 チェコ醸造合資会社の売上増加に危機感を覚えたバドワーザー社は、チェコ醸造合資会社に対し、ヨーロッパ以外の地域で「Budweiser」の名称を使う権利を放棄するよう要求します。
 これにより1939年、チェコ醸造合資会社は「Bud」、「Budweis」、「Budweiser」の名称を、パナマ以北のアメリカ大陸で使用する権利を放棄しました。

 ただし注意点がひとつ。
 1911年の合意を破棄したわけではありません。
 つまり、チェコ醸造合資会社は「Budweiser」という名称を「パナマ以北のアメリカ大陸」以外でなら使ってもかまわないし、バドワーザー社も「original」という呼称を用いてはいけないのです。

 ここまではよろしいでしょうか?

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 話はブドバーに移動します。

 この会社はチェコ醸造合資会社を承継する形で1964年に設立された会社です。
 二回の合意はチェコ醸造合資会社との間で為されたとはいえ、この会社を継承しているブドバー社にも及びます。

 では、日本で起きたことについて書いていきます。

 平成10年、大阪で『国際ビール・サミット』が開かれました。この時、ドイツ語表記の「ブドバー」が並んでいたことが問題になりました。ラベルに「Budweiser」の文字があるうえに、見た目もそっくり。しかも製造元が「Budweiser Budvar,National Corporation」とあったのです。まるで「Budweiser」が出品したかのように見えるこの表記を取り下げるよう、バドワイザー社が裁判に持ち込みました。
 実は、ブドバー社が持ち込んだのはチェコ語表記のものだったのですが、並行輸入業者がドイツ語表記のものを展示していたのを、バドワイザー社はブドバー社が持ち込んだものだと思ったことがさらに問題をややこしくしてしまったのです。

 判決文から、要点を抜粋していきます。バドワーサー社の主張と、それに対する判決の要旨(結果)という書き方で示します。少々噛み砕いて書くので、判決そのものとは少々違いますが、おおよその部分では以下の通りです。


 A.バドワイザー社では、「Budweiser」や「BUD」という標章を日本で登録している。だから「Budweiser」という表記は駄目だろう?

  →
  1.「Budweiser」というのはそもそも、チェスケ・ブジェヨビチェ村で造られたという意味にすぎない。ヨーロッパではそのことをよく知られている。
  2.ブドバーは「Budweiser」という表記を使う権利を承継している(1911年合意)。
  3.そもそもバドワイザー社の名前は、「ブドワイゼ(ブジェヨビチェ)の」にあやかったものである。


 B.それでも「Budweiser Budvar」という表記はおかしくないか? 「Budweiser」をマネしたものじゃないのか?
  →
  「Budweiser Budvar」の部分は、名称である「Budějovickŷ Budvar」をドイツ語にしたものにすぎない。わざわざバドワイザーのマネをしたわけではない。


 C.「Budweiser Budvar,National Corporation」と英語表記されているから、アメリカのバドワイザーと間違える消費者が出てくるじゃないか。
  →
  1.これは「Budějovickŷ Budvar,Narodni Podnik」というチェコ語を英語にしたに過ぎない。
  2.しかも、「BREWED AND BOTTLED BY THE BREWERY CESKE BUDEJOVICE(BUDWEIS) CZECH REPUBLIC」とある。アメリカのものではないことが分かる。
  3.国際的商取引で主に英語が使われているのは周知のこと。英語が母国語ではない国の企業が、商標を英語で表すことには何の問題もない。これが駄目だとなったら、英語を母国語、あるいは公用語としている企業が不当に優遇されることになる。

 
 D.ラベルに「BUDWISER」と赤く大きく書かれているのは紛らわしい。
 →
  大きく目立つように書かれているので、これは普通に表示されている方法とはいえない。これは確かに外すべきだ。

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 この件に関して「アメリカの企業はすぐに言いがかりをつける」という評価もありましたが、決してそうではなく、あらかじめ合意も補償もしているのです。
 ただ、合意の中では「アメリカ合衆国での販売禁止」となっていたのに、日本での出来事に文句を付けて来たのはたしかにやりすぎの感が否めませんね。
 しかも、バドワイザー社はこうした訴訟を日本だけでなく、韓国、香港、オーストラリア、ニュージーランド、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、アイルランド、キプロスでも起こしています。そこまでされると、アメリカ企業全体のモラルが問われそうな気もするのですが、どうなのでしょうね。

 ちなみに、並行輸入業者はバドワイザー社に賠償金を支払っています。ブドバー社にはおとがめなし。

 ところで、「じゃあ、バドワイザー社は世界規模の大会社だし、ブドバー社を合併とか買収とかすればいいんじゃないか?」って思われるかも知れませんね。そうすれば「Budweiser」という標章の問題も起きなくなりますから。
 たしかに、そういう動きも起きました。しかし当時のチェコ共和国副大統領が「品質が落ちる」という理由で反対したため、お流れとなりました。

 現状では、バドワイザー社が「Budweiser」という名称を使えるのは、先ほども書いたように「パナマ以北のアメリカ大陸」、及び、商標登録をしている国だけです。日本でも「Budweiser Lager Beer」として売ることは可能ですが、同じように「Budweiser」の文字を使っているブドバーを、ただそれだけで退けることは不可能となりました。バドワイザー社はFIFAのワールドカップ・サッカーのスポンサーですが、商標登録をしていない国では「Budweiser」の名称を使うことが出来ません。特にヨーロッパで「Budweiser」とあればそれはチェコの「ブドワイゼ」であって、アメリカの「バドワイザー」じゃない。ヨーロッパでのFIFAのCMで「Bud」という名称が使われているのは、そうした理由によるものなのです。

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 少々長くなりましたが、なんとか要点だけは押さえられたのではないかと思っています。
 まあ、面倒くさいですね。楽しく飲めればいいじゃないか、と思ってしまいそうです。

 最後に味の評価を。
 ブドバー:ホップに軽い苦み。ビール自体にはコクがあるのに、あまりそれを感じさせずあっさりと飲めてしまいます。大麦特有の甘みも感じられて、物足りなさはまるでない。
 バドワイザー:全体的に甘いのは、原材料に米が使われているからでしょうか。あっさりしすぎて物足りない。本当に「ブドワイゼ」を参考にしたのか?
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